第二回(5/29) ★ボクがイタリアワインにハマった理由(わけ)


もともとワインの事を本格的に勉強しようと思ったきっかけは7,8年前関西に帰省した際、以前働いていたイタリア料理店を訪れた時、昔後輩だった子がチーフを務めていました。自分が働いていた当時彼はまだ10代で、右も左も分からない料理人の卵だったのに、いつの間にか立派に成長していました。話をしてみると「料理の勉強以外にワインの勉強もしています。ソムリエの資格もとろうかと思ってます。」とのこと、普段人と競い合うなんて苦手なくせに変なところで負けん気の強いボク“後輩に負けてられない。俺もワインの資格試験の勉強をしよう。”と誓いました。

 よく『ソムリエ』と『ワインアドバイザー』ってどう違うんですか?と質問を受けるので簡単に説明すると、ワインの資格試験というのは『ソムリエ』、『ワインアドバイザー』、『ワインエキスパート』の3つがあり、『ソムリエ』というのは実際に「ソムリエ」を職業にしている人が受けるもの。『ワインアドバイザー』は「ソムリエ」以外でワイン関連の仕事をしている人(例えば料理人、酒屋さん、輸入業者のワイン担当者など)が受けるもの。『ワインエキスパート』はワイン関連の仕事をしていない人でワインの勉強をしている人が受けるもので、たしか川島なお美さんは、これだったと思います。1次試験である筆記試験は3つとも全く共通の問題が出されます。2次試験は『ワインアドバイザー』と『ワインエキスパート』の場合、口頭試問とテイスティング(利き酒)があり、『ソムリエ』の場合、この2つにサービスの実技試験(協会員が扮した模擬客の前でのワインの抜栓とサービス)が加わります。そして筆記試験にしてもテイスティングにしてもフランスワインが中心に出題されるので、とにかくフランスワインを完璧にマスターしなければいけないのですが、ボクの場合今までイタリアワインに関しては店でも扱っていましたし、ある程度の知識はあったのですがフランスワインに関しては全く知識がなく、まさにゼロからのスタートでした。ロマネ・コンティがボルドーかブルゴーニュかさえも知らない状態だったのですから。

 ワインを知る為にはとにかく飲まねばと、フランスワインを中心に、例えば地方別にあるいはブドウの品種別に手当たり次第にワインを飲み始めました。でもここで困ったことに気づくんですね。同時に筆記試験の為に勉強もしなくてはいけないんですが、夜仕事が終わって食事とワインを飲むとどうしても飲み過ぎて酔っぱらって勉強ができなくなるんですね。しかたなく1日夫婦でハーフくらい(1人グラス2杯くらい)、つまり2日で1本と決めて、それをほとんど休むことなく丸2年間くらい飲み続けました。そしてワインの事を勉強していくと、今までこんなことも知らずにワインに接していたのかと思うことだらけで、改めてワインの奥深さを知り、いつのまにか“後輩に負けてたまるか” ということなんかどうでも良くなってどんどんワインの魅力にハマっていったのです。

 ワインというのは農作物なんですね。いいワインを作るにはとにかくいいブドウを作ることです。他の穀物酒などは原料の他に水や糖分などを加えますが、ワインはブドウの果汁がそのままお酒になるわけで、原料の出来が直にワインの品質に影響してくるのです。そのために農夫の人たちはきつい畑仕事を朝から晩までこなして健康で凝縮したブドウを丹精込めて作るわけです。ワインを勉強する以前は、ワインを飲んだとき「これはうまいけど、これはまずい。」とか「これは好きだけどこれは嫌い。」などと言う言葉を簡単に口にしていましたが、そういう農夫の人たちの苦労を知ってしまうと、そんな安易な事はは言えなくなってしまいました。ワインというのは本当に造り手の血と汗の結晶だと思いますね。

 またワインというのは天候に大きく影響されるので毎年のように味が違ってきます。それどころか同じ年のワインでも保管状態やコルクの栓の打ち方の強さ加減、または出荷されて間もない若いものと程良く熟成されて飲み頃のものなど全く味が変わってきます。そのうえ同じボトルのものでも抜栓してすぐのもの、1時間くらい経ったもの、さらに翌日に飲んだもの、すべて味が異なってきます。そんな飲み物ってワインぐらいですよね。まさに無限に味が広がって極めようとしても極められないそんなところがワインの最大の魅力だと思います。

 さて、やはりフランスワインというのはワインの中では『王道』です。数々の銘酒があり素晴らしい伝統があります。もともとフランスはイタリアなどと比べると気候条件が不利なのですがそれを補う為にいろんな工夫や努力をして偉大なワインを世に送り出してきたのです。イタリアの場合、地理的にフランスより南にあり気候条件も良くそんなに手をかけなくてもそこそこ良いワインができるので努力を怠っていました。でも今から30年くらい前から「このままじゃダメだ。世界に通用するものを造らないと。」とイタリアの造り手は気づきはじめたんですね。もともと土壌や気候条件で優れているうえに品質向上に本腰を入れはじめたわけですからイタリアワインは急激に進歩し近年ではフランスに肩を並べるところまで来ています。

 イタリアワインの優れている点というのは、まずコストパフォーマンス。一部の大金持ちでとにかく高いワインを持ってこいとおっしゃるお客様以外、たいていのお客様は美味しくてそのうえあまり高くない方が絶対メリットがあると思います。例えば1万円くらいするフランスワインと同等くらいの品質のイタリアワインを探すとたぶん半額以下で手にはいると思います。先日もあるお客様がウチのセラーの5000円のワインを飲まれて「これオーパスワンと同じ味だ。」とおっしゃいました。オーパスワンといえば酒屋で買うと25000円くらい、レストランやバーで飲むとその何倍かの価格です。このようにイタリアワインの中には無名だけど品質の素晴らしいものが、ごろごろしてるんですね。そのようなワインを探し出してお客様にお薦めするのが自分の仕事だと思っています。それからイタリアワインの特徴として、熟成が早いという点があります。フランスワインなどよく5年後が飲み頃とか10年後が飲み頃とかいいますが、せっかちな自分はそんなに待てません(笑)。あればすぐ飲みたいし、お店に置きたいのです。そういう比較的早く熟成するというところもコストパフォーマンスにつながっていると思います。

 もう1つイタリアワインのいい点として、これは個人的な意見ですが、エチケット(ラベル)がおしゃれということです。芸術の国だけあって、色づかいやデザインなどまさにアートです。下手なギャラリーへ行くより酒屋でイタリアワインを手にとって眺めてる方がずっと楽しいです。ウチの店でワインは飲みたいけどワインセラーに入りにくいとおっしゃる方には「好きなラベルで選んでください。美味しくないワインは置いてませんから。」と勧めます。特に女性の方は「ラベルが可愛いからこのワインにしよう。」とかそういう選び方で良いんです。結構そういう選び方で好みにあった美味しいワインに当たるんです。お客様にとってブドウ品種がどうとかヴィンテージがどうとかなんて関係ないですもんね。


 ここまで書いたこのエッセイのなかで、『ワインを勉強する』という言葉を何回か使ってます。でも最近よく思うんですがワインなんてもともと『勉強する』ものじゃなくて『飲むもの』なんですよね。くだらない、うんちくとか知識なんかいりません。まずとにかく飲んでみることです。ワインを飲むと、みんなたいてい陽気になり、おしゃべりになり、笑顔になりますよね。サルーテでもイタリアのようにワインが生活にとけ込み、自然と食事とともにワインが出て、にぎやかな食卓になることが願いです。

 つい先日、冒頭に書いた大阪の後輩が新婚の奥さんを連れてサルーテに遊びに来てくれた。ワインセラーを眺めながら「国松さんって凝り性ですね…。」 “ワインにハマったのはおまえのせい(おかげ?)だよ。”と心の中でニヤリとした。

シェフ

*SIDE MENU*

■営業時間
ランチタイム
 AM11:30〜PM2:30(OS PM2:00)
ディナータイム
 PM5:30〜PM10:30
  (OS PM9:30) (日曜日 PM9:00)
■定休日
 毎週月曜日
■住所
 〒860−0862  熊本市黒髪4-5-3
■TEL・FAX
 (096)343-8081

facebookやってます