第四回(7/23) ★ボクがオートバイに乗る理由(わけ)


 ボクがオートバイに乗る理由、といっても2年少し前に当時乗っていたオートバイを廃車にしてからは乗っていません。すぐに買い換えるつもりだったのですが、ちょうど店の移転の件でとにかく忙しくなりそれどころではなくなってしまったのです。そして昨年無事に移転も終わり、当初の忙しい時期も過ぎた頃さて何を買おうかと考えて、悦子さんに相談したところ、どうもあまり気が進まないふうでした。絶対反対というわけではないのですが、できればオートバイには乗ってほしくないような感じです。たぶんおそらく、こういうことなんだろうと思います。若いときはどうでも良かったんですが、ボクももう40歳。それなりに責任や借金を背負って生きてるわけです。土地も買って家を建てて。オートバイで転んで大怪我でもしたら、大変だと悦子さんは考えているのでしょう。たしかにオートバイはどちらかというと危険な乗り物かもしれません。車のようにシートベルトで守られていたり、エアバックは付いていませんから。転んだらまともにアスファルトやガードレールにぶつかるわけで、鎖骨や足首は骨折しやすいし、ヘタすると死ぬこともありますから。ボクの場合いままで3,4回転んでいますが幸い打撲程度で大きな怪我はしていません。運が良かっただけなのかもしれませんし、悦子さんが心配することも分かるのですが、ボクにとってオートバイというのは、生きていく中でかなり大きな位置を占めてるんです。

 ボクがはじめてオートバイに乗ってみたいと思ったのは中学生の頃、片岡義男の小説を読んだときだと思います。題名は忘れましたが立て続けに2,3冊読みました。片岡義男の小説は波乗りやオートバイ、アメリカのハイウェイやハワイを扱ったものが多いですが、出てくる男女がすべて美男美女、ドロドロしたものがなく軽くてドライでオシャレなストーリーばかりだから、あまり現実感はないのですが小説なのだからそれで良いのでしょう。ボクの友人でも片岡義男の小説は嫌いという人も結構いますがボクは一発でハマりました。オートバイが出てくる話ばかり読みましたが、とにかくオートバイの描写がすごくリアルで新鮮でした。真夏のツーリング、風を顔に受けたいからフルフェイスではなくジェット型のヘルメットにサングラス、色あせたオレンジ色のTシャツにリーバイスのジーンズ、セーム革のグローブに頑丈な作りのブーツ。夕立のあとの虹を追っかけて走ってみたり。真冬のツーリング、降り始めた粉雪がシリンダーフィンにあたり、「ジュッ、ジュッ。」と心地よい音をたてる。かじかんだ手をマフラー(排気管)に触って暖めて自販機のコーヒーとマルボロのタバコで一服とか。深夜、寝静まった住宅街、自宅のガレージから250Kg以上あるオートバイを押して国道まで出てエンジンスタート、獣の咆哮のような排気音。地獄の首都高速巡りに出かけたりだとか…。そして出てくるオートバイというのがZ2やW3、CB750フォアだったりしてとにかく渋くてカッコイイのです。

 オートバイの魅力というのはまず、じかに空気を切り裂いて加速する感覚だと思うんです。車じゃこれは味わえません。車の運転も好きなのですが、比べものにならないくらいオートバイのほうが面白いです。車というのはある程度おう着な運転ができますがオートバイはそうはいきません。ちょっとの気のゆるみが事故に繋がってしまいます。第一、走ってない状態の時でも両足で踏ん張ってないと倒れてしまうんですから。運転中は常にいい意味での緊張感を保ちつつ、五感を研ぎ澄まして走ります。車の時は分からない、その時々の季節の匂いだったり、風だったり、陽ざしだったりを全身で感じます。オートバイに乗っていて嬉しい瞬間というのは自分のイメージどおりのコーナーリングなどができたときです。コーナーに差し掛かる前、頭の中で“だいたいこのあたりでブレーキング、6速から5速、4速と素早くシフトダウン、車体を傾けて膝を突きだす。視線はコーナーの出口。アウトインアウトできれいに抜ける。車体を立て直しながらシフトアップ、アクセル全開でフル加速。” という風な事を一瞬のうちに考え、その通りにできたときなど最高の気持ちです。マシーンを操るという感じが好きなんです。面白いものでオートバイというのは運転者の視線の方向に進むという習性があります。カーブを曲がる際、コーナーの出口を見ろといわれるのはそのためです。どうしてもビビって手前の路面やガードレールを見てしまいがちですが、そうするとホントにぶつかったり、こけたりしてしまいます。怖くても出口を見ていれば自然とその方向にマシーンは向かいます。急制動(急ブレーキ)も車と比べるとかなり難しいです。乾いた路面でも簡単に後輪がロックしてしまいますし、滑り出すと車体を制御するのはとても困難で、まともに路面に叩きつけられます。フロントとリアのブレーキをバランスよく(9割方フロントですが)かけないといけません。また、車のようにハンドルを切ったから曲がるというものでもありません。ハンドルを切りつつも体重移動をして車体を倒しバランスを保ちながら曲がるという、全身を使って運転するという感じが楽しいのです。

 オートバイに乗るわけというのは、ボクにとって心をリフレッシュしストレスを発散できるというのが大きな理由かもしれませんが、本能的にというか、わけもなく無性に乗りたい走りたいと思うことがあります。オートバイを眺めているだけでときめくような気持ちになります。ワックスをかけてピカピカのタンク、磨き上げた直列4気筒やL型ツインのシリンダー、引き締まったシート、ボリュームのあるテール、挑発的に伸びたマフラー。純粋にマシーンとして美しいと思います。自分ではなく他人がきれいなフォームでライディングしているのを見ていても嬉しい気持ちになります。悦子さんの気持ちも大事ですが、危険な乗り物という以上に、ボクにとっては大切なものであり、時間なのです。悦子さんに反対の気持ちがある以上、それを押し切って乗りたいとは思いませんが、そのうちなんとか説得して(笑)、またオートバイに乗りたいです。そしていつの日か憧れのトライアンフやドゥカティ、BMWなどを手に入れたいです。

シェフ

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