メインメニュー
最新ブログエントリ
ギャップ
(2009/01/07)
ラーメン
(2009/01/06)
年末・正月テレビ
(2009/01/05)
チーズと日本酒
(2009/01/04)
芸能人格付けチェック
(2009/01/03)
牝馬グランプリ
(2008/12/30)
在庫
(2008/12/29)
紫の野菜
(2008/12/28)
ショッキングピンク
(2008/12/27)
金時人参
(2008/12/26)
ログイン
ユーザID または e-mail:

パスワード:

IDとパスワードを記憶

パスワード紛失

新規登録
オンライン状況
3 人のユーザが現在オンラインです。 (1 人のユーザが エッセイ を参照しています。)

 登録ユーザ: 0
 ゲスト: 3

もっと...
TRATTORIA Salute

第十五回(8/30) ★飲食店ってどうよ?

 サルーテをオープンした当初から、よくいろんな人に「ご夫婦でお店をされてて良いですね。」と 声を掛けられます。でも“隣の芝生は青く見える”じゃないですけど、それほど良いことばかりじゃありません。 長引く不況の中、お店を経営していくというのはホントに大変ですし、飲食業というのはどちらかというと キツイばかりで儲けのうすい‘割りの悪い’仕事です。はっきり言って知り合いの人に「飲食店を始めたいんだけど」と、 もしも相談されたら、絶対にやめた方がいい!と答えると思います。それじゃなぜ飲食店を続けてるのかというと、 やはり料理を作るのが好きですし、料理を食べて下さった方が「ああ、美味しかった。」と笑顔になる瞬間を見るのが 自分にとって最高の悦びだからです。料理の鉄人の道場六三郎さんが、何かの雑誌に「食べ物屋やってて、 金儲けをしようなんて思っちゃダメ。お客様に奉仕することを考えなくちゃ。」と書かれてました。 料理人として経営者として素晴らしい言葉だと思いました。

 たいていの男の子が子供の時、プロ野球選手になりたいって思いますよね。毎日、日が暮れて暗くなるまで ボールを追っかけて野球をして、毎日野球をして暮らせたら幸せだろうなっと思って。でも実際プロの選手に なれるのはほんの一握りでその中で活躍できる選手はまたその一部です。プロというのは結果がすべてですから プロセスとか、これだけ練習したとか、努力したとか関係ありません。よくプロ野球選手が、子供のとき草野球を していた頃が一番楽しかった、ってコメントをしますよね。あの気持ちはよく分かります。プロとアマチュアの違いです。 いくら好きで始めても、それを職業にしてしまうと心から楽しめなくなってしまう気がします。プロになって結果を残して お金を稼いで家族を養うってホントに大変なことです。料理人も同じように思います。料理人として働く以前、 ボクは子供の頃から料理を作るのが好きでよく家族に料理を作っていたのですが、笑顔で「美味しい。美味しい」と 食べてくれたときすごく嬉しくて料理を作って暮らしていけるならこんなに幸せなことはない、と考え料理人になろうと 決めました。でもプロになった以上、料理を作るのが好きだからだけではダメです。常に勉強し進歩していかなければ いけませんし、そのうえ自分のお店をしているのだから、経営として成立させなければいけません。いくら良い料理を 作っても経営としてうまくいかなければ意味がありません。経営者としては料理さえ作っていればいいと言うわけには いかないのです。お店全部に気を配らなければならないですし、人間ですから体調が悪くて料理を作りたくないこともあれば、 イヤな客にも料理は作らなければなりませんし、原価計算もしなければなりません。子供の頃家族に作ったように 気心の知れた仲の良い人達だけに原価など考えずに良い食材だけを使って料理して暮らしていけたらどんなに 幸せだろうと考えてしまうこともあります。でもやはりこう考えてしまうのは“甘え”なのでしょうね。プロとしてはそういうものを 全部ひっくるめて克服しないといけないのでしょう。自分としては煮詰まってしまったとき、料理人としての駆け出しの頃の ことを想い出すようにしています。毎日朝早くから夜遅くまで働き、先輩からは怒鳴られ叱られしていましたけど、全然 ツラくはなかったです。毎日どんどん新しい仕事、技術、料理が覚えられ、自分の引き出しがどんどん大きくなっていく時期、 正直、毎日が楽しくて楽しくて仕方なかったです。はじめて給料をもらったときのことも忘れられません。好きなことをして 仕事を教えてもらって、そのうえお金までもらっていいのかなと正直思いました。初心に返るというのでしょうか、 若い頃素直に感じていた新鮮な情熱や悦びを想い出すと、ツラいときや苦しいときも乗り越えていけるような気がします。

 実をいうとボクたちがお店を始めたのは、お店を持ちたいと思って始めたのではなく、たまたま成り行きなのです。 もちろん料理人のはしくれですから、将来いつかは店を持ちたいとはおぼろげに思ってはいましたが、まさか25才で 自分の店を持つとは考えてもいませんでした。大阪から熊本に引っ越してきて働いてみて、1番に思ったのは給料の 安さです。その分物価も安いですから暮らしやすいということなのでしょうが、給料は大阪でもらっていた額の半分になって しまいました。これではいくら暮らしやすいとはいえ、結婚もしていますし家族を養っていくにはきびしいです。共稼ぎを しないとやっていけません。それでどうせ共稼ぎをするなら二人で気楽にお店でも始めようかと考えたのがきっかけなのです。 普通お店などを始める際、お店の立地条件や、通りの人の往来数、周辺のお店の客層や客単価など細かく調べて 慎重に考えてからお店を出すわけですが、ボクたちをそういうことを一切やってません(笑)。たまたま借りてたアパートが黒髪で 近所にあった旧店舗を見つけ、「大学がそばにあるし結構人は、いるんじゃないの。」ぐらいの、安易にそして無謀に 始めてしまいました。よくボクは「こだわりなんてありません。」という言葉を使うのですが、それほどお店の経営とういものに 執着は持っていません。やりたいようにやっているだけで、たまたまいい就職口がないから自分でお店をやっているだけなのです。

 皆さんももう、うすうす感じておられるとは思いますが(笑)、はっきりいってボクたちはお店の経営者としては向いていません。 関西や熊本で飲食店を経営されている同業者のオーナーシェフの方を何人も知っていますが、だいたい皆さんどの方も 饒舌で勉強熱心で向上心やバイタリティーのある方ばかりです。お店の規模をもっと大きくしたい、支店を増やしたい、 料理雑誌に載ったりテレビに紹介されるような有名な店にしたい、こういう希望に燃えて仕事をされてる方が多いですし、 それが普通の経営者の姿なのでしょう。ボクはと言えば、料理人としては勉強も好きで向上心はあるつもりですが、 経営者としては全然ダメです。人前に出ることが苦手ですし、何人も人を雇ってお店を大きくしたいなんて、これっぽっちも 考えていません。開店以来、広告宣伝費もほとんど計上していませんし、テレビなどもお断りしてしまいますし、必要以上に お客さんを増やそうとはしていません。きっと怠け者なのでしょうね、ある程度の収入があればそれ以上働きたいとは思わないのです。 どちらかと言えば経営するより人に雇われて料理人をやっている方が気楽で良いと考えています。もし自分に経営者としての 資質とやる気ががあったとしたら、サルーテのお店、今の3倍くらい儲かっているのではないかと思います。

 皆さんは‘悦子さん’が接客の仕事に向いていると思われていますか?いっけん人当たりも良いし、よく気が利くので向いているように 見えますが、実際はあまり向いていないように思います。本人がいつもそう言います。きっと人が良すぎるのでしょう、接客によるストレスや プレッシャーをまともに受けてしまうようで、毎日仕事が終わると疲れ果てているように見えます。お店をやっていると気心の知れた常連さん ばかりではなく‘いちげんさん’や態度の悪いお客さんも来られるわけで、ひどく気を使いすぎたり、文句やクレーム、嫌味を言われてたりして、 ストレスをため込んでしまうようです。開店して16年目になりますが、悦子さんが「お店を辞めたい。」と漏らしたのは1回や2回じゃ ありません。必要なことだけを聞き、後は聞き流してしまえばいいのですが、なかなかうまくはいかないようです。 ‘悦子さん’という人、ボクから見ると芸術家肌の人間だと思います。絵を描くのがとても上手ですし、学生時代ブラスバンド部だったそうで 楽器も弾けるし、和裁も出来るし、手先が器用で運動神経もとても良いのです。もし今の仕事をしていなかったら、自分の感性を 生かした何かの職に就き、その道で1流になれる能力を持っている人だと思います。たまたま料理人であるボクと結婚してしまったばっかりに 不向きな接客の仕事をさせてしまっているようで、申し訳ないなあと思うことが時々あります…。

 “飲食店ってどうよ?”ってことですが、自分自身も隣の芝生は青く見えるで、サラリーマンの人なんか気楽でいいよなあとか、いつも 思ってます。でもホントはどんな職業にも長所や短所があって、みんなそれぞれ大変で、苦労があって、楽をして儲かるような仕事なんて そんなにはないんでしょうね。人のことを羨むより、まず自分が好きなことを職業にして食べていけていることに感謝しなければいけないですね。 常連のお客様にも感謝しなければいけないなあと、近頃よく思います。サルーテのお店が、この立地条件の悪い場所で、しかもこの不景気の 時代に続けていけているのは、定期的に顔を出してくださる常連さんがおられるからです。開店当初からいい常連さんに恵まれたから、今の サルーテがあるのでしょう。そのことを何年か前にある常連さんに話したところ、「それはマスターの美味しい料理と、悦子さんのあったかい接客が あるからですよ。だから常連さんが増えるのですよ。」とおっしゃって下さり、とても嬉しかったです。苦手だ苦手だと思いながらも、なんとか二人で 力を合わせてお店を続けてきたから、それなりにお客さんを増やしていくことができたのだなあと感じました。やはり自分にとって“食べ物屋”と いうのは天職だと思っています。やっていてとても楽しいし、生きがいを感じることができます。おそらく他の職業ではダメなのではないでしょうか。 サルーテは、料理を作るのは好きだけど経営が苦手な経営者と、接客の苦手なマダムがやっている‘ちょっと変わったお店’です。でもこれから先も、 自分たちのできる範囲の中でベストを尽くし、自分たちも小さな悦びを感じ、お客様にも小さな悦びを与えて続いていくのだろうと思います。


このエッセイに関するご意見や感想など、なんでも掲示板に書き込んで下さい。


シェフ
プリンタ出力用画面 友達に伝える
前のページ
第十四回(2004/06/12)
コンテンツのトップ 次のページ
第十六回(2004/10/09)


投稿された内容の著作権はコメントの投稿者に帰属します。
投稿者 スレッド
TRACK BACK ANYWHERE
_MB_TBANY_LANG_TRACKBACK_URL
http://trattoria-salute.com/modules/tbAny/tb.php/
copyright (c) 2003-2005 TRATTORIA Salute All rights reserved.