第六回(10/12) ★長〜いトンネル
今回は愚痴を聞いてもらいます(笑)。もともとこのエッセイのコーナーを始めようと 思ったのは、今回の話を書きたかったからなのです。心の中にあるモヤモヤしたものを 吐き出してしまいたいんですね、きっと。 皆さんは厄年って信じますか? ボクの場合、厄年などの類の迷信や神頼み、占い、風水など全く信じませんでした。 ほんの1年くらい前までは…。でもここ3年ほど前から、ちょうどお店の移転の話が 出てきた頃からですが、とにかく運の悪いこと、ついてないなあと思うこと、嫌なこと つらいことが連続して起こり、厄年ってあるんだなーと思い始めました。お店、家を新築し 多くの人から「おめでとう。」や「すごいですねー。」、「えらいね。」などと言葉を掛けて 頂きましたが、心の中では“良いことばかりじゃないんだよー!”とずっと叫んでいたように思います。今思うと一番最初のつまずきというのは、現店舗の土地を購入する際だったと思います。 簡単にいうと仲介してくれた不動産屋の単純ミスなのです。ご存じかと思いますが 黒髪の一帯の土地というのは平安時代の遺跡が出る可能性のある土地で熊本市の 決まりで家を建てる際などに基礎をある程度深く掘る場合は、事前に発掘調査などを しなければいけないんですね。つまり仲介者としては契約の前に購入者であるボクに 文化財保護の指定のある土地ですなどの告知をする義務があるのです。また普通は 契約前に土地の持ち主と相談し先に発掘調査をしたうえで土地を売るべきなんですね。 仲介した不動産屋は、そのことをまったく忘れていたそうです。実は自分でも土地の契約を する前に、何か建物を建てる際の制約がないか熊本市役所の建築課を訪ね、その旨を 聞いてみたのですが、またその時応対した職員が態度の悪い奴で、投げやりで横着な調べ方、 口の利き方でした。結局なにも重要な制約はないという回答だったのですが、その時“建築関係の 制約はありませんが、文化財保護の指定地域ですから文化財課にも訊ねてみられたら。” と一言親切に教えてくれればいいのにと、後々腹立たしく思いました。結局ボクとしてはそういう 特殊な土地であるということを認識せずに土地を購入し、いざ着工という段階で発掘調査を しなければならないことが判明し、不動産屋に問いただすと「すみません。うっかりしてました!」 との答え。腹わたは煮えくりかえりましたが、今更しかたありません。発掘費用などは不動産屋と 前持ち主に払わせ、性急に工事が着工できるよう、発掘調査を早く終わらせるように熊本市の 文化財課に話をつけるよう依頼しました。それでもやはりはじめ考えていた完成の時期よりも 3ヶ月くらいは遅れることになってしまったのですが、この3ヶ月の遅れが後々になって大きく響くことになるのです。
さて話は前後しますが、とりあえず土地の契約を終え、建築業者と設計などの打ち合わせをしようと いう事になりました。建築業者は知り合いの方がいたので依頼しました。ただ普通の家ではなく、 店舗付き住宅ということでいろんな面で打ち合わせすることが多すぎました。お金が有り余っていて、 すべて思いのままに設計などが出来れば幸せですが、ある程度限られた予算の中での家づくりですから 大変です。建築業者との打ち合わせと平行して資金の調達も考えなければいけません。銀行や金融公庫など との話し合いも始めました。数ヶ月間ほとんど毎日のように建築業者や金融機関と打ちあわせです。 お店のランチが終わってディナーまでの1,2時間ですが、ボクとしては心も体も休める時間がなく、ホントにすごい ストレスが溜まりました。もともとそんなに話すのが得意ではありませんし、それも顔を突き合わしてお金の貸し借りや、 予算内でどれだけこちらの要求をのんで設計してもらうかという胃が痛くなるような話ですから、ホントに毎日が 苦痛でした。そしてそんな時期に追い打ちをかけるように、大事な趣味であるオートバイが壊れストレスを発散する 手段を失ってしまいました。それから車の運転中にタイヤがバーストして危うく大事故になりかけたり(大事故になって ないのだから幸運とも言えますが)、そしてこれもかなり痛かったのですが小学生のころからの友人にお金を貸してくれと 頼まれ、断り切れずにお金を貸すとそのまま音信不通になったりとボクのストレスはドンドン膨れます。 それでも建築業者との打ちあわせも終わり、資金調達の面もメドがつき、さあ着工というときに先程書いた 遺跡の件が発覚したのです。もともとは年末の忙しくなる前の11月下旬完成予定で考えていたのですが、 やむをえず翌年の2月下旬にオープンということになりました。
そしてこの3ヶ月の遅れがどうして不運なのかというと、新しい家に引っ越すわけですから、それまで住んでいた マンションを手放して売買するわけですが、そのマンションが不景気のため売れなくなってしまったのです。数軒の 不動産屋に売買を依頼していたのですが、まったく売れません。あと2,3ヶ月早くマンションを明け渡していれば、 年内だったらいっぱいオファーがありおそらく簡単に購入者は見つかったのですが、年明けから急速に景気が悪化して 全くオファーがなくお手上げです、と不動産屋。たった3ヶ月の違いですが、マンションが売れる売れないはこちらとしては 大問題です。結局、2月の半ばに新居に引っ越しをしたものの、マンションはリフォームをしたまま、賃貸で借り手が (やはり売れなかったので)見つかった8月まで遊ばせておくことになってしまい、現在の家のローンとマンションのローンとを ダブって払う羽目になり、経済的にかなりの大打撃をうけました。土地購入の際ミスを犯した不動産屋に対し何らかの 形で損害を請求できないかという事も検討したのですが、もうこれ以上もめるのはイヤだねと、悦子さんと話し合い、それは やめておきました。それ以外にも建物に関しての建築業者の設計ミスが分かったり、パソコンが壊れたり、新店舗の 隣家から店舗前の駐車の車がうるさいとか調理の際のニオイが臭いと頻繁にクレームを言われたり、車が壊れて かなりの額の修理代がかかったり、前店舗にあったワインセラーを大阪の知り合いに譲ることになって、運送屋に 頼んだのですが運搬中にセラーが壊れ運送屋とトラブったり、エスプレッソのマシーンが壊れ修理中に一時借りようとした レンタルのエスプレッソマシーンが、前使っていた人の手入れ不足で虫の卵が産み付けられていてお店で虫が 異常発生したり(結局その借りたマシンは一度も使うことなく業者に叩き返し、虫はその後完全に駆除しました)、 大阪で働いていた頃のとても仲の良かった友人と些細なことでケンカをしてしまったりと、これ以外にも小さな事を 入れれば数え切れないくらい不運な事がこれでもかこれでもかと襲ってきました。もうとにかく一生分の不幸が一度に やってきたような感じでボクのストレスも臨界状態でした。
周りの人すべてが自分をだまそうとしているのではと考えてしまい、人が信じられなくなって人と会ったり喋るのが 億劫になり、体重も3年程前と比べると5キロぐらい落ち、精神的にも追いつめられたような状態でした。そんな時です、 ちょうど昨年の夏の初め頃、悦子さんが「厄年なんじゃない?おはらいに行こう。」と。悦子さんもボクと同じで占いとか 厄年とか全然信じない方ですが、そんなことを言い出すなんて悦子さんもかなり精神的にまいっていたのだろうと思います。 普通厄年って42歳といいますが、実際は数え年ですし、前厄だの厄入りだので38歳くらいからおはらいなどはした方が いいそうです。神社で訊ねてみるとボクの場合、厄まっただなかとのこと。即おはらいをしてもらいました。でもおはらいを したからといって急に運勢が良くなるなんて思っていません。ただ精神的に弱ってる時ってなんにでもすがりたくなるものなんですね。 それに悪いことが続いたからといってそれがホントに厄年のせいだと本気で思っていたわけではありません。ただなんらかの 理由づけがほしかったのです。厄年だからついてないんだと自分を納得させたかったんですね、きっと。はっきりいって気休めかも しれません。でも厄年というものを本気で信じようとするほど弱気になっていたんだと思います。厄年なんてこじつけだ、と思う人も いるでしょう。でも男の42歳前後って仕事で重い責任を負ったり、体調を崩したり、人生の岐路に立たされたり、人生の中で 一番難しい時期なのではないでしょうか。それでその時期を厄年といって昔から注意するようにといわれているのでないかと思います。
今年になっても、大事な肉親が病気になったり、まだめげることは続いてますが、それでも近頃になってようやく 長いトンネルの出口が見えてきたような気もします。少しずつではありますが良い方向に転がってきたかなという 感じです。こういうエッセイのコーナーができて思ってることをぶちまけられたのもその一つかも知れません。 ある人から聞いた話ですが、人生の中の良いことと悪いことの数は同じだそうです。良いことがあれば、それと同じだけの 悪いことが起きて結局はプラスマイナスゼロになるそうです。スポーツや芸能、芸術の世界で、若いうちに凄い栄光を つかんだような人は、その後あんまりパッとしませんもんね。いままでわりと気ままにのんびりとマイペースでやってきた分、 良くないことばかりがやってきたのかもしれません。 もしこのエッセイを読まれてる方で同じように悩んだり、トンネルに入ってしまっていたり、精神的にまいってる方が いるかも知れませんが、きっと時間が解決してくれると思います。誰にでもついてない時期はあると思うし、 そういうときはじっと我慢をして悪い時期をやり過ごすことです。ずっと悪いときが続くはずはないし、悪いときの 後はきっと良いときが来るはずですから。これは自分自身に言い聞かせてる事でもありますが…。
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