第一回(5/15) ★サルーテの目指すもの


 今回エッセイのコーナーを持つことになりました。イタリアの話やワインの話料理の話、サルーテからのメッセージなどを書きたいと思います。今回は『サルーテの目指すもの』というテーマで書きました。月一回くらい更新できればと考えています。よろしくお願いします。

 時々雑誌などの取材を受けるのですが、よく聞かれるのが「お店のこだわりは何ですか?」と言う質問です。そのときいつも「うーん」と考え込んでしまうのです。おそらく、取材する方は「すべて無農薬野菜を使ってます。」だとか「食材はすべてイタリアから取り寄せてます。」っていう答えを期待してると思うんですが、ウチとしては特別にこだわりというものはないんです。もちろんサルーテでも、できるかぎり減農薬、無農薬の野菜を使ってますし、入手できるものはイタリアからの輸入ものを使ってます。でもこういうのは、当たり前のことでこだわりというものではないと思うのです。それでもしいて、こだわりというかサルーテとして目指すものは何かと考えたとき頭に浮かぶのは、毎日食べても飽きない料理を作ろうということと、自分自身が食べに行きたいと思える店づくりをしようということです。レストランの場合大きく分けて2つに分かれます。一つは非日常的な料理でお客様をもてなす高級レストラン(リストランテ)。もう一つは大衆的な食堂(トラットリア)。当然サルーテの場合は後者です。毎日来て下さるお客様もおられるわけで、できるだけシンプルな料理を心がけています。サルーテの料理の味、イマイチ物足りないと思われてる方がおられるかもしれません。それはたぶん、化学調味料を使ってないからだと思います。特に若い人など化学調味料に慣らされている人などには少し味気なく感じるのではないでしょうか。(時々、疲れているときなど塩辛くなってしまうことはありますが。)サルーテの場合、パスタ料理にしてもお料理にしても野菜や魚、肉などから出た旨みに塩やスパイス或いはチーズやアンチョビ、エキストラヴァージンオイルなどで味付けしているだけです。でもこういう料理こそが毎日食べても飽きない料理だと考えているのです。

 自分自身が食べに行きたいと思える店というのは、私とお客様の個人的な好みが違うわけですから、すべてのお客様から支持されるとは思っていません。ただ自分自身が来たくない店なのにお客様に「また、いらして下さい。」とか「ぜひ一度お越し下さい。」などと言えませんから、とにかく自分ならこういう店に行きたいと思えることを実行しています。新店舗にワインセラーを造ったのもそれです。ワインに興味のないお客様にとってワインセラーは無意味なものかもしれませんが、ワインが好きなお客様にはたまらなく嬉しいはずです。だって自分自身がそうなんですから。イタリア料理には絶対ワインは欠かせません。堅苦しく考えずワインを飲みながらワイワイガヤガヤして頂くとこちらも嬉しい気持ちになります。サルーテはもしかしたらトラットリアではなくオステリアまたはタヴェルナ(どちらも居酒屋風食堂の意)を目指しているのかもしれません。いつの日かすべてのテーブルにワインが出るのが目標です。

 サルーテがオープンして15年目になりますが今までに7,8回テレビの取材依頼がありました。でもすべて丁重にお断りしています。別に取材拒否というわけではありません。それほど繁盛もしていませんし、そんなに料理の腕にも自信はありません。ただ恥ずかしいだけなんです。人前で気の利いた話なんてできませんし、テレビなんてとても。経営者としては失格かもしれません。テレビに出るというのはかなりの宣伝効果でしょうから。でもテレビを見て、来られるお客様というのは一過性だと思うんです。美味しい店に食べにい行ったというより、テレビに出た店に食べに行ったということで満足してる部分があるように思うんです(そうじゃない人もいるとも思いますが)。飲食店というのはやはり宣伝するよりも口コミでお客さんが広がっていくような店じゃないと生き残れないように思うんです。もう一つは物理的に無理ということもあります。基本的にランチタイムは夫婦二人、ディナータイムはバイトを入れて三人です。テレビなどに出て突然お客さんが増えても対応できません。料理を出すのが遅くなって怒らせて帰らせるよりは、できる範囲でボチボチやってる方が性にあってるようです。常連さんの中には「あまり宣伝しないでほしい。有名になっちゃうと私たちがゆっくり食事できないから。」と半分冗談、半分本気でおっしゃる方もいます。新しいお客様を増やすことよりも、今現在、この交通の不便なへんぴな場所にある店に足を運んでくださる常連の皆様を大切にすることの方が大事じゃないかと考えています。そうすればおのずとその常連さんたちが新しいお客様を連れてきて下さるのではないでしょうか(願望かも)。サルーテはこの調子で人知れずひっそりとマイペースで15年近くやってきました。このスタンスはたぶんこれから先も変わらないでしょう。みなさんこれからもよろしくお願いします。

ここまで読んで下さった方、有り難うございます。オーナーシェフとしての本音をここまで出したのは初めてです。


シェフ

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