第二十一回(4/13) ★タコ焼きとトワイライトエクスプレス


 ボクが小学校低学年の頃の夢は、“タコ焼きを腹一杯死ぬほど食べる”というものでした。当時タコ焼きは大好きな食べ物第1位だったのです。それは今でも変わっていません。少なくとも寿司や麺類と並んでベスト3に入っています。外がカリッとキツネ色に焼けていて、中はトロッと柔らかく、天かすや紅ショウガがタップリ入っていて、タコは大きすぎず小さすぎず、柔らかいけど噛むと旨味がじわじわ出てきて、甘辛いソースをタップリぬって、青のりとカツオ粉がかかっていて…。子供の頃、これほど美味しい食べ物は他にはないと思っていました。実家の近所に小さな小汚いタコ焼き屋さんがあり(でも味は絶品でした)、ちょっと小遣いが貯まるとよく買いに行っていました。そしていつか大きくなったら死ぬほど食ってやると思っていました。でも少し大人になると買おうと思えばいくらでもタコ焼きが買えるようになって、他にもいろんな美味しいものと出会い、“タコ焼きを腹一杯死ぬほど食べる”という意識もいつしか薄れはじめました。それでも社会人になって大阪に住むようになっても、最寄りの私鉄の駅前にある屋台のタコ焼き屋でしょっちゅう買って食べていました。この屋台のタコ焼きも実家の近くの店に負けないくらい絶品でした。それがなぜか熊本に引っ越してきてからは、ほとんどタコ焼きを食べたことがありません。なんとなく熊本には、京都や大阪で食べていた美味しいタコ焼きに匹敵するタコ焼きには出会えないような先入観のようなものがあり(でも実際は美味しいタコ焼き屋さんはあるのでしょう。もしご存じの方教えて下さい。)、あまり熱意を持って熊本で美味しいタコ焼き屋さんを探そうという気持ちが起こらないのです。

 先日、『約三十の嘘』という日本の映画を観にいきました。詐欺師6人が大阪から寝台特急に乗り札幌に向かい、北海道で大仕事を成功させ大金を手に入れます。帰路も同じ寝台特急で帰ってくるのですが大金を入れたトランクが消えて…。誰が仕組んだのか、誰がだましたのか?と、こういうお話なのですがなぜこの映画を観に言ったのかというと、もちろんお話が面白そうと言うのもありますし、主題歌を担当したのがクレージーケンバンドだからという理由もあるのですが、1番の理由は映画の舞台である豪華寝台特急が『トワイライトエクスプレス』だからなのです。実は今現在のボクの夢は、“トワイライトエクスプレスに乗る”というものなのです。しかも宿泊したい部屋は普通の部屋ではなく、A個室スウィートと呼ばれる最上クラスの、そしてその中でも1つの列車で1部屋しか存在しない、列車の最後部1番1号、3方を窓に囲まれ、後方の展望を独占できる個室に乗車するのが夢なのです。でもさすがに超人気の寝台特急ですのでチケットの入手はかなり困難なようです。『トワイライトエクスプレス』というのは、大阪ー札幌間約1500キロを約21時間かけて走ります(上りは約22時間半)。正午に大阪を発ち、琵琶湖沿岸、金沢、長岡などの日本海側をひた走り、翌朝札幌に着きます。ディナーもランチもすべて完全予約制、お料理は豪華フレンチのコース、内装は本場「オリエント急行」をモデルにして造られたと言います。上級クラスの個室にはウエルカムドリンク、シャワーまで完備されているまさに日本一の‘走る超豪華ホテル’です。

 ボクは特別鉄道マニアというわけではありません。他の列車はほとんど何も知らないのです。でも日本最長距離を走る、日本一の豪華寝台特急と聞くと、とても興味をそそられます。札幌くらいまでなら飛行機を使えばあっという間に着きますが、わざわざ時間をかけてのんびり行くところに、ホントの贅沢があるような気がします。旅行ではなく“旅”なのです。『でっかいどー、北海道』のエッセイの稿にも書きましたが、なぜか“旅”というものに非常にノスタルジックなものを感じます。ただし今の自分にはトワイライトエクスプレスの旅はまだまだ早すぎるような気がするのです。トワイライトエクスプレスの個室スウィートの旅は、やはり仕事をリタイヤしたくらいの年齢の熟年夫婦のフルムーン旅行などが似合うでしょう。一生懸命働いて家族を養ったご主人と、家庭を守り子育てに奮闘した奥さんが、自分たちへのご褒美にかなえる夢のような旅でしょう。個室スウィートの金額なども調べたのですが、想像したよりはあまり高くないのです(だから余計にチケットが手に入りにくいのでしょう)。ですから今すぐにでも行こうと思えば行くことは可能ですが、やはり先の楽しみにとっておこうと思います。

 いまから十数年後、大阪で大量にタコ焼きを買い込み、トワイライトエクスプレスに乗車したいです。すると大昔の夢と今現在の夢が同時に叶えられるというわけです。

シェフ

*SIDE MENU*

■営業時間
ランチタイム
 AM11:30〜PM2:30(OS PM2:00)
ディナータイム
 PM5:30〜PM10:30
  (OS PM9:30) (日曜日 PM9:00)
■定休日
 毎週月曜日
■住所
 〒860−0862  熊本市黒髪4-5-3
■TEL・FAX
 (096)343-8081

facebookやってます