第三十回(8/26) ★缶ビールのロマンス


 『ボクがオートバイに乗る理由(わけ)』のエッセイで書きましたが、子供の時はじめてオートバイに乗りたいと思ったのは片岡義男の小説を読んだ時です。そして今でも真夏の季節がやってくると、無性に読みたくなり本棚の隅で埃をかぶった何冊かの片岡義男の小説を引っ張り出し読み返します。

 ボクが1番好きなお話は「缶ビールのロマンス」という短編集に入っている表題作の『缶ビールのロマンス』です。簡単にストーリーを書くと、夏休みに12日間の休暇をとった主人公が、休みの前半はオートバイで九州方面へツーリング、後半は彼女と信州の別荘で過ごすという計画を立てます。しかし彼は彼女と別荘で会う期日が近づいても、オートバイの調子が悪い、部品を盗まれたなどと嘘をつき、瀬戸内の海岸で寝ころび1日中缶ビールを飲みながら体を焼いて過ごしたりします。そしてそのうち台風がやってきて、オートバイでは走れなくなり結局彼女と別荘で過ごすという約束はすっぽかすことになります。彼はわざと彼女とは会わないようにしたわけですが、これは決して彼女を嫌いになったわけでも、別れたいと思っているのではなく、女の人には理解できないかもしれませんが、時に男は愛する人がいても、ひとりで趣味に没頭したり、ひとりで自由を満喫したい時があるものなのです。結構男の人は「わかる。わかる。」と思うのではないでしょうか。微妙な男心(笑)なのです。オートバイに乗る時以外、ずっと缶ビールを飲み続ける主人公、かっこいいなあと思ってしまいます。

 「ボビーに首ったけ」という短編集に入っている『どしゃ降りのラストシーン』というお話も好きです。高校2年生の主人公の男の子が退屈な夏休みを過ごしていると、クラスメートの女の子から自殺をほのめかす絵葉書が届きます。そしてもう1枚別の男の子にも同じ内容の絵葉書を送ったと書かれていました。主人公はその男の子と連絡を取り、絵葉書に書かれていることは本気なのか冗談なのかと話し合います。そこに東京の大学に通う主人公の姉が現れ、異変を察知し事の成り行きを聞きます。姉は二人に早く現場に行って自殺を止めさせるのよ!と一喝します。はじき出されるように二人はオートバイで絵葉書で予告されている山中の現場に向かいます。しかし二人がオートバイをとばした甲斐もむなしく女の子は遺体で発見されます。どうして自殺したのか?どうして二人に絵葉書を送ったのか?謎は深まりますが、実は鍵を握る第3の絵葉書が存在して…。と、こういうお話ですが、17歳の頃のピュアな心や想い、思春期特有の残酷さ、友情が描かれてとても好きな作品です。

 オートバイが出てくる長編で好きなのはやはり『彼のオートバイ、彼女の島』です。これはもう名作ですね。映画化もされています。信州の高原で偶然出会ったオートバイに乗る男性と一人旅をする女性、女性はオートバイに興味を持ち、撮った写真を送るからと連絡先を交換します。その夏、彼は彼女に誘われて彼女の出身地である瀬戸内の島をオートバイで訪れ再会します。学校の校庭で彼のオートバイに乗ってみたいという彼女。そして思った以上にうまく美しく乗りこなす彼女。ふたりの恋のはじまりです。彼が乗るオートバイはカワサキのW3という650ccですが、この小説のはじめのほうで彼が自分のオートバイが愛おしくて涙を流すシーンがあります。これはたいていのオートバイ好きにはわかると思います。コツコツ貯金をし、やっとの思いで手に入れた憧れのオートバイ。自分の心臓の鼓動とオートバイの排気音が一体化した瞬間。美しいマシンがホントに愛おしく感じられます。この物語はオートバイ乗りのバイブルですね。

 ボクの個人的なオートバイの好みを書かせてもらうと、オフロードよりオンロード、アメリカンよりヨーロピアン、余計なカウルなんかが付いていない2気筒または4気筒マルチの4ストロークエンジンが好きです。

 上記の3冊を含めて何冊か片岡義男の小説を持っています。もし興味をお持ちの方はお貸ししますのでおっしゃって下さい。

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